東葛中合格への道

2020年東葛飾中学合格。家族で挑んだ初めての中学受験3年間を父親目線で振り返る。入学後の情報も更新中。

東大合格者数から思うこと

今回は、中学受験の6年後の話ですが、東葛中学から東葛高校へ進学した後の大学受験について考えてみます。

以前書いた記事(東葛中に関する相談)では、いわゆる難関大学に進学することを目的に、東葛中受検を検討することはお勧めしないこと、東葛中で学ぶことはむしろ大学入学後や社会人になってから役に立つことを書きました。しかし、親が中学受験を考える際に、大学進学を意識しないことはあまり無いと思いますし、私も意識はしています。

そこで今回は、2021年の高校別大学合格者数のデータを元に、大学受験について考えてみます。
東葛中卒業生の結果が出るのは、東葛中1期生が大学受験する2022年以降です。

参考にするデータは、東京大学京都大学の現役合格者数です。この2大学を選ぶ理由は、重複合格が無い点と、高校の進学力を表す指標として、最もポピュラーで分かりやすいからです。また、東大だけでなく京大も含める理由は、私の個人的な経験と偏見もありますが、特に関東圏においては、東大合格が難しいから京大を選ぶケースは稀で、京大の自由でアカデミックなイメージに惹かれて敢えて京大を選ぶ場合が殆どのため、東大と京大を同等と捉えることが妥当と思うからです。

※以下はサンデー毎日4月11日号から引用した集計結果です。尚、実際の高校発表とは異なる場合がありますし、高校は私の勝手なチョイスです。

2021年度入学 東大・京大現役合格者数
見方:◎公立中高一貫校、◯公立高入のみ、☆私立

【千葉県】

◎県千葉(東大15、京大3、計18)
◯県船橋(東大8、京大6、計14)
東葛飾(東大3、京大6、計9)
渋谷幕張(東大46、京大7、計53)
☆市川(東大22、京大3、計25)
東邦大東邦(東大2、京大3、計5)

【埼玉県】

◯県浦和(東大25、京大5、計30)
◯大宮(東大12、京大2、計14)
浦和一女(東大4、京大2、計6)
☆栄東(東大11、京大1、計12)
☆開智(東大8、京大0、計8)
浦和明の星(東大3、京大0、計3)
☆開智未来(東大2、京大1、計3)

【東京都】

筑波大駒場(東大70、京大0、計70)
◯日比谷(東大48、京大5、計53)
◯西(東大11、京大10、計21)
◯国立(東大15、京大6、計21)
◎小石川(東大18、京大5、計23)
◎桜修館(東大3、京大2、計5)
☆開成(東大106、京大0、計106)
☆麻布(東大49、京大5、計54)
☆武蔵(東大23、京大5、計28)
桜蔭(東大61、京大4、計65)
☆女子学院(東大21、京大4、計25)
☆雙葉(東大8、京大1、計9)
☆渋谷渋谷(東大28、京大5、計33)
広尾学園(東大3、京大2、計5)

【神奈川県】

横浜翠嵐(東大44、京大6、計50)
◯湘南(東大8、京大3、計11)
◯柏陽(東大3、京大0、計3)
聖光学院(東大69、京大4、計73)
☆浅野(東大37、京大6、計43)
栄光学園(東大34、京大2、計36)

上記のような結果になりました。単年度の東大・京大の現役合格者数だけ比較してもあまり意味は無いかもしれませんが、中学受験で最難関と言われる学校の威力が際立つ一方で、中高一貫ではない公立高校の日比谷・横浜翠嵐・県立浦和の健闘も目立ちます。

しかし、ここで私が注目したのは、京大の現役合格者数です。名だたる進学校の中にあって、東葛飾高校の6名は比較的上位であり、立派な結果だと思います。過去の合格実績を見ても京大の比率は比較的高く、東葛生にとって魅力を感じさせる大学なのかもしれません。

更に注目した記事

実は、このサンデー毎日の特集には別の記事があり、こちらの方が私の目を引きました。それは、東大合格者への実名アンケートです。この中には浪人生も含まれていると思いますし、合格者全員の結果でないことも考慮が必要ですが、私が更に注目したのは「大学受験で利用した予備校、塾などの名前」という設問です。

以下がその集計結果です。

 2021年度入学 東大合格者の予備校・塾利用状況(浪人生含む)
見方:予備校・塾利用有りの数/アンケートに回答した合格者数=予備校・塾利用率
Z会は通信か教室か不明のため塾無しとしてカウント

【千葉県】

◎県千葉(9/9=100%)
◯県船橋(9/9=100%)
東葛飾(未掲載)
渋谷幕張(24/24=100%)
☆市川(4/4=100%)
東邦大東邦(1/1=100%)

【埼玉県】

◯県浦和(15/16=94%)※無しの1名はZ会と進研ゼミ利用
◯大宮(2/2=100%)
浦和一女(1/1=100%)
☆栄東(4/11=36%)※無しのうち3名はZ会利用
☆開智(4/8=50%)
浦和明の星(1/1=100%)
☆開智未来(0/2=0%)

【東京都】

筑波大駒場(21/21=100%)
◯日比谷(11/13=85%)※無しのうち1名はZ会利用
◯西(5/5=100%)
◯国立(4/5=80%)※無しの1名はZ会利用
◎小石川(7/7=100%)
◎桜修館(2/2=100%)
☆開成(32/32=100%)
☆麻布(18/18=100%)
☆武蔵(11/11=100%)
桜蔭(11/11=100%)
☆女子学院(8/8=100%)
☆雙葉(1/1=100%)
☆渋谷渋谷(6/6=100%)
広尾学園(未掲載)

【神奈川県】

横浜翠嵐(16/16=100%)
◯湘南(3/3=100%)
◯柏陽(1/1=100%)
聖光学院(15/15=100%)
☆浅野(16/16=100%)
栄光学園(10/10=100%)

上記を見ると分かりますが、殆どの生徒が予備校や塾のお世話になっているのが実態です。特に最難関と言われる進学校では、予備校や塾に通っていない生徒が一人もいませんでした。

これは東大合格者の一部を抽出した内容ですので、この結果を全てとして捉えることはできませんし、どの位の期間や頻度の通塾だったのかも不明です。しかし、敢えてこのアンケート結果のみで判断すると、ドラゴン桜のように学校の指導力だけで東大合格に導けていると思われる面倒見の良い学校は、通塾率が50%以下の栄東・開智・開智未来だけ、と言える結果でした。もちろん、医学部や早慶上智GMARCHなどの合格数の指標でみれば、別の考え方もあることは承知していています。

※追記

サンデー毎日の合格者インタビューは、予備校の協力を得ている場合もあり、予備校に通った生徒の比率が高くなりがちなようです。また、成績優秀な生徒を予備校がほぼ無料で囲い込む特待制度もあるため、予備校を上手に利用して東大・京大に現役合格している生徒が多数いることは事実だと思いますが、予備校に通う=東大・京大に現役合格する、という図式が成り立つ訳ではないことを追記いたします。

学校に求めるべきことは?

ここからは私見ですが、結局はどんな進学校に通っていても、学校の勉強や指導だけで東大のような最難関大学に合格しているのは、本当に一握りだということです。また、最難関と言われる中学に入学しても、鉄緑会のような東大受験専門塾に通う生徒が多数いることも周知の事実です。これらをふまえると、学校の偏差値や東大合格者数で中学や高校を序列化し、中学受験や大学受験を論じること自体、無意味にも思えてしまいます。

このように考えると、東葛高校からの大学進学について、数十年前の大学進学実績と比較して凋落している、東葛高校の自由で面倒見の悪い校風が大学進学に悪影響を及ぼしている、という意見をネットで目にしたことがありますが、それは東葛高校の教育システムの課題が主要因ではなく、真因はもっと別のところにあるように思えます。

これは極論かもしれませんし、逆に当たり前かもしれませんが、中学や高校の学校選びに関しては、学校の大学進学実績は参考程度に考えて、単純にその学校で何を学びどのようなことを身に付けたいのか、どのような環境でどう学びたいかという観点で学校を選ぶことが正解のように思います。そして、大学受験のペーパーテスト対策に関しては、一部の面倒見の良い学校を除いては、予備校や通信教育等の別の機関の力を借りることを前提に考えるのが、現実的のようにも思えます。(私は予備校等の回し者ではありませんので、予備校の力に関心はしますが賛美するつもりもありません)

念のため誤解の無いように補足すると、面倒見の良い学校を否定する気はありません。むしろ、それらの学校は学校教育と予備校の機能を両立させるという、難易度の高いことに挑戦しているのだと思いますし、それを実現するためにそれなりの時間と労力を割いているのだと思います。

もちろん、学校の生徒の進学意識が全体的に高く、必要であれば猛烈に勉強することが当たり前の環境に身を置くことで、躊躇なく高い目標にチャレンジする気持ちを自然に醸成できる効果を期待できることも否定しませんし、特に伝統校と言われる進学校にそのような雰囲気が備わっていることは、よく言われていることです。

また、実際に私の知る限りでは、単に学校の勉強だけで東大や京大に合格した例は聞いたことがなく、それぞれの受験生がそれぞれの方法で猛勉強して東大や京大に合格しています。それは、最難関と呼ばれる私立高校や、地元で名門と呼ばれる公立高校いづれの出身でも同様です。

つまり、中学や高校で学ぶべきことは、どのようにして大学へ行くかではなく、なぜ大学へ行きそこで何を学ぶか、物事に対してどのように考えてどう行動すべきかであり、その意味では、東葛中のように自分達で考えて行動することを主とした教育方法は理にかなっているのではないかと、今更ながらに思えてきました。

更に言えば、中高の学校生活を通して、本当に目指したい職業やそのために学びたい大学を探し、その大学に行く手段として入試の得点力を高めることが必要であれば、塾などの力を借りてでも勉強しようとするのが、正しい姿のように思います。

学校の役割とは?

学校の役割は、それらのきっかけを与える触媒のような存在なのだと思います。例えば、進路指導も理系だとか文系だとか、このくらいの成績ならこの大学に入れるという指導ではなく、いろいろな体験や気付きを与えながら将来目指す職業を先に考えさせて、その通過点である大学はどこを選択すべきか、その大学に行くためにはどの位の努力が必要なのか、仮に目指したい職業を決められないのであれば、中高の期間で出来る限り学力を高めて、将来の選択肢を広げておくことが得策なことを指導すべきだと思います。

もし、東葛高校に課題があるとするのであれば、大学進学のための補習を増やすとかいうことではなく、大学の先の進路を生徒にはっきりと意識させることが課題なのかもしれません。

参考に、東葛高校の進路指導の理念には、「東葛飾高校では、進路指導を広義にとらえ、生徒が将来どのような職業に就いてどのように社会に貢献していくのかについて真剣に思考し、模索してもらうことを通して、悔いのない進路選択ができるようにサポートすることを最も重視しています。入試に合格する学力をつけることはもちろん、これからの生き方を考えさせるような進路指導を行うことを目標としています。」と明記されていますので、この理念をしっかり実践できてきるかどうかが重要なのですが、実際のところ実践できているのかは、私も確認できていません。

東葛中においては、職業体験や東葛リベラルアーツ講座があります。特に中2からは、Quest Education という探求学習とキャリアデザインを目的としたプログラムが導入されますので、これらの体験を通して、将来の方向性がある程度意識付けされることを期待しています。

もちろん、東葛中のようなアクティブラーニング中心の教育スタイルは、どこの学校でも簡単に実践できるものではなく、生徒の向き・不向き、先生の質や努力などの条件が揃わななければ成立しませんので、その理想の教育スタイルを成立させるための適性検査なのだとも感じています。

いわゆる最難関の学校の教育方法を調べても、学校で受験勉強を指導していない例はよく聞きます。例えば、40%以上の東大現役合格率を誇る筑駒では、教科書を全然使わない、授業内容では先生が好きな分野のマニアックな内容ばかり教えている、生徒も学校のイベントばかり一生懸命やっている、という話が出てきます。この点で言えば、筑駒ほど極端ではないにしても、東葛も似たような学校だと思います。おそらく、筑駒の生徒にとっても、学校は知見を広げたり様々な交流や経験をする場であり、受験勉強は別の場であると割り切っているのかもしれません。

そうは言っても、親であれば子供の学校の成績が気になるのは当然ですし、ついつい口出ししてしまうのも親心だと思います。大学進学を含めた進路も心配だと思います。正直なところ、私自身も子供の成績に一喜一憂してしまいますし、いろいろ口出ししたくなる親の一人ではありますが、できるだけ学校教育の場と受験勉強の場は別のものだと考えた方が、精神衛生上も良いように思えてきました。

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