東葛中合格への道

2020年東葛飾中学合格。家族で挑んだ初めての中学受験3年間を父親目線で振り返る。入学後の情報も更新中。

父親を上手に巻き込む方法

「二月の勝者 絶対合格の教室」(週刊ビッグコミックスピリッツ連載)という中学受験の漫画をご存じでしょうか?この作品の主人公の塾講師が放つセリフに「君たちが合格できたのは、父親の『経済力』そして、母親の『狂気』」というフレーズがあります。

確かに、一般的に中学受験にお金はかかります。しかも受験日が近付くにつれて課金額が増える仕組みにもなっています。ちなみに、過去の課金を無駄にしたくないと思って課金し続けてしまう心理をサンクコスト効果と言いますが、価格戦略的にも上手い手法だと感心してしまいます。

先述の「二月の勝者」にも、受験を『課金ゲーム』に例える描写があります。漫画ですので少し誇張していますが、中学受験と塾の関係性を上手く表現していると思います。

我が家は、4年生の春から通塾よりも比較的安価な通信教育からスタートして、4年生の夏からは通信教育と算数のみの通塾を併用した後、6年生の春からは通塾一本に絞りましたが、3年間の塾費用はそれなりにかかりました。

[通信教育や通塾の参考記事]
「塾なしスタートの中学受験」
「塾なしは自分と孤独との闘い」
「塾選びの前に決めるべきこと」
「塾と通塾のダブルスクール」
「塾のメリットとデメリット」

しかし、父親の役割がお金だけで良いとも思いません。一方で、ドラマ化もされた「下剋上受験」のように父親が全面的に関与する方法も簡単ではありません。

今回は、私自身の反省も込めていますが、我が子の中学受験に対して、私の参画意識を上手く高めるために、妻が講じた策について述べたいと思います。

先ず、我が子の中学受験そのものに対しては、私も妻も最初から肯定的な意見でした。しかし、具体的な勉強方法の検討や塾(通信教育)の選定は、都度打合せはしたもののほぼ妻任せでした。塾以外の日々の小学校の勉強についても、私の帰宅が遅いという理由もありましたが、私が子供の勉強を見たり内容を知ることは滅多にありませんでしたし、そもそも小学校の宿題の具体的な内容も把握していませんでした。今時の小学校の宿題は、音読を聞くとか丸付けをするなど、親の出番が結構あることも、恥ずかしながら私はあまり知りませんでした。

我が子が小学4年生になり、通信教育である四谷大塚の「リトルくらぶ」を受講し始めましたが、日々のスケジュール管理はほぼ妻任せで、私は算数や理科の分からない内容をたまに教えるだけでした。

塾に通うようになってからは、塾の成績などの基本的なことは把握していましたが、我が子が今どのようにして日々の受験勉強を計画していて、実際にどの位勉強を実行できているのか、どのような課題を抱えていて今何をすべきか、分かっているつもりで、しっかりとは分かっていなかったように思います。

そこで、我が子の中学受験に対して、私を更に巻き込むために妻が講じた策は、塾の保護者会や受験候補校の入試説明会に私を積極参加させることです。もちろん私しか参加しませんので、私自身が情報収集担当となり、内容をしっかり把握した上で、妻や子供に情報共有する必要があります。

こうすることによって、妻の思惑どおり、妻だけにお任せになりがちだった塾の状況把握や中学受験への取り組み方の理解も深まりましたし、今後の対策を妻と一緒に考えることにも役立ちましたので、上手く巻き込んでくれて良かったと思っています。実際に、それらに参加するようになって以降は、私も主体的に関与することが増えたように感じます。

夫婦の役割分担は、各家庭の状況も様々ですので、我が家の方法がどの家庭にも適合するとは思いませんが、特に父親の関与や理解が足りないと感じている場合は、私の妻が講じた策を試して頂きたいと思います。

この方法は、中学受験だけでなく、一般の公立中学に進学して高校受験する場合も、父親の関与や理解が足りない場合に有効な策だと思います。

以降の話は脱線気味になりますが、実際に自分で情報収集するようになって気付いたことは、自分自身が受験生だった頃と今とでは社会環境が一変していることです。

例えば、日本人が高校を卒業して大学進学する18歳人口は、1992年の205万人がピークですが、我が子が高3になる2025年は109万人(2020年では117万人)となる見込みで、1992年の53%(2020年では57%)しか18歳がいません。(文部科学省「学校基本統計」より)

参考に、東京大学の募集人数(一般入試)は、1992年の3,586名に対して2020年が3,060名ですから、1992年の85%です。単純に18歳人口の57%と東大募集人数の85%で比較すると、東大の合格難易度は85÷57=1.5倍軟化している計算になります。(東京大学「東京大学の概要 平成4年度」 「東京大学の概要 2020資料編」より)

また、私立大学を代表して早稲田大学を調べてみると、入学者数(内部進学・推薦・二部・帰国生含む、外国学生・9月入学除く)は1992年の10,033名に対して2020年が8,614名ですから、1992年の86%です。二部の学部が一部に変わるなど当時と今で条件が違いますが、内部進学や推薦も含めた早稲田大学入学の難易度も86÷57=1.5倍軟化している計算になります。ちなみに、内部進学や推薦を除いた一般入試だけで比較すると、1992年の7,421名の入学者に対して、2020年入学の募集人数は4,730名(1992年の64%)で64÷57=1.1倍の軟化ですから、一般入試以外の進学方法の比率が増えていることも分かります。(早稲田大学「1990~2010年度 学部入学者数(一般入試)」 「入学者数の推移(2012~2020年度)」 「2020年度一般入学試験および大学入試センター試験利用入学試験結果」より)
慶應義塾大学も調べましたが1992年のデータを探せませんでした。

早稲田大学だけでなく、私立大学への入学方法は、最近は45%程が推薦(内部進学含む)やAO入試なのだそうで、大学への入学方法も多様化していることがデータから読み取れます。(文部科学省「平成30年度国公私立大学入学者選抜実施状況」より)

これらの数字からも、約30年前の昔と今とでは、子供達が大学生や社会人になる過程の社会環境が全く異なることが分かります。

大学入試だけでなく、国家公務員総合職(旧Ⅰ種)試験の合格者数は、1992年入学の大学生が4年生になる1995年(平成7年)の1,683名に対して2020年が1,897名で1.1倍となっていますので、仮に人口が60%に減少とすると110÷60=1.8倍軟化している計算になります。他にも、司法試験の合格者数は、1992年入学の大学生が大学卒業後4年(27歳程)で合格すると仮定すると2000年(平成12年)の994名に対して2020年は1,450名で1.5倍ですので、こちらも仮に人口が60%に減少とすると150÷60=2.5倍軟化している計算になります。(厳密には端数等の誤差がありますが分かりやすい数字で計算しています)

いづれも国策で試験方法が変わり合格者数を増やしている背景はありますが、最難関と言われる国家試験でさえも、少子化で30年前からほぼ半減した人口を考えれば、かなりハードルは下がっていると言えます。(人事院「平成7年度年次報告書」  「2020年度国家公務員採用試験状況」法務省「旧司法試験第二次試験出願者数・合格者数等の推移」 「令和2年司法試験法科大学院等別合格者数等」より)

もちろん、上記に挙げた大学入試や国家試験は今も昔も難関であることに変わりないですし、多少軟化しても必要な努力レベルに大きな差は無いと思います。

ここで私が言いたいことは、昔よりも競争が少ないから努力する必要がないのではなく、正しい情報に基づいて正しく努力すれば、特に試験を伴う分野においては、その努力が報われる可能性が昔よりも高まっているということです。つまり、大学進学や国家試験だけにフォーカスすれば、教育に対するカネと時間の投資回収リスクが昔よりも相当低くなっているのです。

話を戻しますが、子供の教育への父親の参画は、企業における人材育成やチームマネジメントに置き換えて考えても良いと思います。

例えば、子供が中学生の場合、子供の学習に対する父親にありがちな傾向として、「中学生なのだから干渉せずに好きにやらせれば良い」「自分が中学生だった頃は親からあれこれ言われなかった」と言って、子供への関与に消極的な意見を言うことがあるかもしれません。

もしそのような場合は、子供が自分の部下や後輩だと思って考えた方が分かりやすいと思います。例えば、自分の部下や後輩の成績がうまく上がらなかったり伸び悩んでいた時に、そのまま放置するでしょうか?大抵の方は、何かしらのアドバイスやサポートをして、より良い結果が出せるように促すと思います。このように、社会人同士では当たり前の行為を自分の子供にしないというのも、合理的ではないと思います。

そして、父親が合理的な判断をするためには、今の受験や大学進学がどのような環境や仕組みになっているのかをデータに基づいて現状把握し、今の子供にとってどのようなサポートが適切なのかを、父親自身も調査研究することが必要だと思います。

私自身も我が子の中学受験を通して気付いたことですが、上記のように自分が受験生だった頃と今とでは前提条件が違うため、当時の正解や成功体験を今にそのまま適用することは正しくないのです。

一番難しいのは、子供に勉強することの有効性をきちんと理解させて、具体的な実行に移すように導くことだと思います。この点に関しては、我が子もまだしっかり理解できているとは言えない状態ですので、我が家の課題でもあり、親子の永遠のテーマだとも思いますが、結局は子供と根気強く対話を続けて理解を得るしか解決方法はないように思います。

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