東葛中合格への道

2020年東葛飾中学合格。家族で挑んだ初めての中学受験3年間を父親目線で振り返る。入学後の情報も更新中。

一般の公立中学の学習環境

今回は、東葛中の話からは少し離れて、地元の学区の一般の公立中学について、どのような学習環境にあるのか、これまでに知った情報を踏まえて、私なりの考えを述べたいと思います。

一般の公立中学の面倒見

小学生を持つ親が中学受験を考え始める理由の一つに、一般の公立中学の教育体制や環境に不安があることを挙げる方もいると思います。しかし、そこには誤解もあるようです。先に結論から言うと、今時の一般の公立中学はとても”面倒見が良い”と思います。特に、自習用のテキストは充実しています。

※我が子の学区の一般の公立中学の例ですので、一例とお考えください。

例えば、自習用のテキストに「ワーク」というものが存在します。これは教科書業者が自習用に提供している補助教材で、市販されていません(「教科書ワーク」という似た教材は市販されています)。ワークでの自習が宿題となる場合もありますが、教科によってはワークに1回書き込んで終わりではなく、2回書き込めるように別のノートも用意されていたり、作りはとても親切ですし、内容もまとまっていてとても良くできた教材だと思います。もし、これらのツールをしっかり"使い倒す"ことができれば、授業で教わる内容に関してはほぼ完璧に学習できますので、参考書も不要だと思います。(東葛中にワークはありません)

授業についても、ノート等を確認する限り、今時は板書をひたすら書き写すような作業も少なく、丁寧に教えている印象です。また、授業効率化の狙いもあると思いますが、プリントの配布が中心のようです。(東葛中でもプリントはよく使われています)

他にも、定期テスト前は、1ヶ月程前から出題範囲が公表されて、テスト当日までの勉強スケジュールの管理表も提供されており、とても親切だと感じました。しかも、担任の先生が管理表の進捗状況を毎日チェックまでしてくれます。(東葛中にこのような管理表は存在しません)

通塾が必要になる理由

我が子の学区の公立中学では、既に中学1年時で通塾していないのは少数派だと聞いています。(学校や地域によりバラツキはあると思います)

学校は面倒見が良く、授業もツールも充実しているのに、何故通塾が必要なのでしょうか?もちろん、難関私立高校を目指すのであれば、学校の勉強内容だけでは太刀打ちできないと思いますので、通塾等が必要になると思います。しかし、大半の中学生の第一志望は地元の公立高校(県立高校もしくは市立高校)です。実際に千葉県立高校の過去問を解いてみましたが、千葉県の県立高校入試では東葛中のような難問は出ませんし、問題量もそこまで多くありません。例えば、東葛中の検査のボーダーラインは一次と二次の合計で200/400点程(50%の得点率)と言われていますが、東葛飾高校の入試ボーダーラインは内申点を除いて420/500点程(84%の得点率)のようです。入試ではなく、特に中学校の定期試験への対策であれば、本来は学校の授業と補助教材の学習で充分と考えても良い筈です。

※念のため、通塾するメリットはいろいろありますので、通塾自体は悪い選択ではないと思います。

通塾が必要となる理由を解明するには、先に小学校と中学校で必要な学習方法の違いを理解する必要があります。親であれば感覚的に分かっていると思いますが、学校の授業と宿題だけでそこそこテストの点数が取れるのが小学校、学校での授業と宿題に加えて、家庭での学習をしっかりやらないとテストの点数が取れないのが中学校です。

中学生になると、学ぶ範囲の広さや深さが小学生と大きく変わります。例えば、算数は数学に呼び方が変わるだけでなく内容も深まりますし、国語には古文などが加わり漢字も難易度や量が増します。英語も本格的な内容になりますので、これらの教科を授業と宿題だけで全て理解したり知識を定着させるのは、至難の業です。

そこで必要になるのは、日々の学習内容の理解度を確認したり理解を深めるための振り返りや、知識を定着させるための日々の復習です。しかし、小学生の時に振り返りや復習の習慣を身に付ける機会がなかった子供が、中学生になって急にそれらの学習を自力でできるようになる筈もありません。

加えて、中学生になると授業時間も増え、部活に入れば帰宅時間も更に遅くなるため、就寝時間を遅くしたり帰宅後の過ごし方などの生活習慣を見直さない限り、家庭で勉強する時間を確保できません。(地域差はあると思いますが、千葉県はとても部活が好きな地域のようで、小学校から部活が盛んな印象です)

そのため、小学校までの学習スタイルとの切り替えが中学校で上手くいかず、中学生から通塾の必要性を感じる家庭が急増するのだと思います。もちろん、それを見込んで中学生からの通塾を予め決めている家庭も少なくないと思います。

勉強しても学校の成績が伸びない理由

ちゃんと勉強している筈なのになかなか中学校の成績が伸びない、という話を実際に耳にしたことがあります。次は、この理由について考えてみます。

中学生になってからは、小学生までの勉強方法を見直したり、通塾等を開始する子供が増えますので、小学生の頃よりはそこそこ勉強する層(Bグループとします)のボリュームが増えます。そして、Bグループだけ(沢山勉強する層のAグループとあまり勉強しない層のCグループを除いた層)を抜き出して考えると、Bグループの得点分布の山のピークは、全体の平均点よりも少し高い位置になる現象が起きます。(AグループとCグループの山は、Bグループの前後にできるため、ABC三つの山ができます)

参考に、一般的に公立小学校のテスト(カラーの紙のテスト)の平均点は85点位、一般の公立中学校の定期テストの平均点は60〜70点を目安に作成されているそうです。(実際には中学の学年が上がるにつれて上下の得点差が激しくなり、平均点は下がる傾向だと思います)

そこで、仮に全体の平均点を65点とした場合、Bグループだけを抜き出した平均点が70点位になると仮定すると、Bグループのボリュームゾーンは65〜75点位になると考えられます。すると、仮に平均点の65点付近の子供が10点上乗せしてBグループのボリュームゾーンを超えて75点以上に抜けるには、小学生時代とは比較にならない努力が必要になります。その結果、そこそこ勉強している筈なのに平均点周辺のメンバーからなかなか抜け出せない、という現象が起こるのだと思います。(図で説明できればわかりやすいのですが、テクニックがありませんので御勘弁ください)

このような背景を考えると「小学生のうちは学校の勉強だけやっていれば良い」と考えて、中学生になっても小学校からの学習スタイルを変えない、もしくは少し変えた程度でいると、小学生までの成績(テストの点数)は悪くなかったのに中学生になって成績が悪化する、もしくは小学生の頃よりは勉強している筈なのに成績が伸びない、という現象が起こるため、塾の力を借りて本人の意識や学習スタイルを変える必要性に迫られるのだと思います。

これは、俗に”中1ギャップ”と呼ばれる現象の一つだと思います。

中1ギャップを防ぐ方法

勉強面の”中1ギャップ”を防ぐためには、小学生と中学生のギャップを小さくすることが必要で、その方法は2つあると私は考えています。

1つ目は、小学生のうちから学校の宿題以外にも地道に勉強する機会を設けて、勉強習慣もしくは勉強体力を培っておき、勉強量の中1ギャップを減らすことです。(勉強体力については、「中学受験で得たもの」で触れています)

そのためには、小学生のうちから市販のテキストなどで自習する時間を確保したり、塾や学習系の習い事で学んだことを、自宅でしっかり復習することを身に付けておく必要があると思います。つまり、学校や塾でのインプットだけでなく、小学生のうちから自宅でアウトプットする時間も充分に確保する習慣を身に付けておくことで、中学生にソフトランディングできるのです。

ちなみに、脳科学的にはインプットとアウトプットの比率は、3:7が理想だと言う説があります。しかし、実生活を考えるとアウトプット7の比率は結構高いハードルだと思います。問題を解いたり書くことだけでアウトプット7とするのも大変ですので、例えば、授業や塾で学んだポイントを口頭や図で説明することをアウトプットと解釈し、親から「今日学校で学んだことはどんな内容だった?」と問いかけて、子供に言葉や図でアウトプット(説明)させることが効果的かもしれません。これによって、子供の学習内容を把握でき、親子のコミュニケーションと子供のアウトプットもできるため、一石三鳥だと思います。また、塾に通うこともインプットが中心ですので、塾が終わってからのアウトプットがとても大切だと思います。

テストに関しては、定期テストだけでなく、学校の小テストや塾のテストの結果を自身でしっかり振り返り、間違った問題の要因(ミス?、理解不足?、覚えていない?)を解明し、その対策をした上で、必ず2回目は解けるようにして、復習の"質"を高めることが必要だと思います。(テストの復習方法については「テスト結果の活用法」でも触れています)

2つ目は、そもそも自分にとって何のために勉強が必要なのか?をしっかり理解させて、ぼんやりでも良いので何か目標を持つことで、意識面の”中1ギャップ”を減らすことだと思います。特に思春期になると、やらされ感が一番の障害です。私も中学生の頃は、親に勉強のことを言われて反発した覚えがあります。

中学生にもなれば、自分が将来ありたい姿をイメージして、そのために必要な手段が勉強なのだ、という結論にならない限り、モチベーションを保つことは難しいと思います。もし、自分の将来像がイメージできないのであれば、将来の選択肢を狭めず、可能性を広げるためにも、尚更勉強しておくことが得策であることを理解する必要があると思います。(親が言っても駄目な場合は、子供が信頼する第三者の大人の力を借りても良いと思います)

例えば、職業の選択肢に関しては、大学を卒業しなければ取れない資格や取りにくい資格が沢山ありますし、求人条件に大卒以上を求める企業や職種も沢山あります。もちろん公務員も然りです。ベンチャーで事業を立ち上げるにしても、大学時代の友人と起業したり、有名企業に勤めた後に起業している例は少なくありません。

このように、未来志向で今やるべきことを考える手法は”バックキャスティング”と呼ばれています。企業において、中長期の事業方針を考えたり、革新的な新商品やサービスの開発をするために、10年後などのあるべき姿を想像し、現在とのギャップから逆算して、これからどうすべきかを考える方法です。

小学生や中学生も案外大人です。但し、知識や経験が不足していますので、とても視野が狭いことも事実です。もし、”バックキャスティング”の考え方を伝えて理解を得ることができれば、今もしくはこれから何をすべきか?何をした方が得策なのか?自分が求めることを学ぶためにはどのような中学や高校に進学すればその確率が高まるのか?の答えは、本人なりに導き出せるように思います。そして、子供が自分でそのような結論を導き出せるような情報を提供したりサポートをするのが親の役割なのだと私は思います。

最後に

以上、偉そうに書いてしまいましたが、私も完璧に親の役割を果たせているとは思っていません。しかし、そうありたいと心掛けてはいます。また、正直なところ、我が子がどの程度これらのことを理解できているか確認できていませんが、東葛中を目指し始めた頃から、将来の選択肢や可能性を広げることにはつながっているように感じていますし、中1ギャップも発生していないように思われます。但し、放っておくとのんびりしがちな部分もありますので、我が家も本人の自主性に任せきれていないのが実情ですし、それが中学生なのかとも思います。まだまだ親の苦労は続きそうです。

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